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2013/03/06

比較明におけるHDR

都会で星の写真を撮っていると、ライトアップされたタワーや車のヘッドライトがうるさかったり、星に色がつかなかったりする問題がある。これをどうすればいいのでしょうか。

素材は、先日公開した「増上寺」。

20130215zoujoji

見て判るように、この夜は未明だというのに、東京タワーのライトアップが消えておらず、本来の目的であった2012DA14の撮影はその時点で敗北したようなものだった。とはいえ、上記2点の問題を解説する素材としてはなかなか適切だと思う。

まず、次の写真をご覧いただきたい。

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これは、8秒露出×200コマのjpgを、キクチマジックで比較明合成した瞬間の画像である。増上寺の仏閣は黒く落ち、東京タワーは白飛びしている。

ここから上の画像をつくる。ダイナミックレンジを広くするHDRだ。

まず、この元データで使うのは空の部分だけ。暗い仏閣の部分は長めの露出をかけた画像、逆に明るい部分は短めの露出の画像を重ね合わせる。

フォトショップのレイヤーパレットは下のようになっている。

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まず、一番下の元データから、空の部分の明るさをトーンカーブで整える。これは、現地でちゃんとjpgを撮れていれば必要ない処理だ。トーンカーブは画像の諧調を劣化させるので、できる限り使わない。最後の最後に、どうしてもという時にのみちょっとだけ使う。

20130215zoujoji11

ではなぜ空をこんなに暗く撮ったのかというと、この時は小惑星が写っていたら新聞で使うつもりだったので、比較明しただけの段階でもなんとかなるよう、東京タワーがあまり白飛びしない露出にせざるを得なかった。未明に撮って夕刊に載せるのに画像処理してる時間がなかったので。

そうでないなら、撮影時は空の諧調にのみ配慮した露出や色温度を選ぶことが肝要だ。基本はこんな感じである。

  • ISO400、F4、4秒露出
  • 色温度3400K
  • ピクチャースタイル:シャープネス最弱、色の濃さ最大

星を途切れさせないために露出時間を10秒未満、シャープネスを最弱(左いっぱい)にする。

そして、星に色を付けるために、色の濃さを最大にする。ニコンのD800なら、とてもカラフルな星の色が出せる。キヤノンは全体的に薄めだ。今から思えば、ニコンのデジカメで発生していた微光星の偽色は、この色再現と行ってこいだったのだと思う。

ところが、色の濃さを最大にすると、人工物の色(今回の場合は東京タワーのオレンジなど)がどぎつくなり過ぎる。そこで、手前のものはすべてRAWデータの1枚撮りから補う。

まず、長い露出をかけたRAWデータを用意する。

20130215zoujoji3_2

この画像で使う部分は暗い所だけなので、暗い部分だけ透過させるマスクを作る。

まず、レイヤーパッレットでこの画像を左クリックして選択された状態にしておき、「チャンネル」パレットを選んで一番下に出てくる点線の○を押してマスクを読み込ませる(画像がチラチラなる状態)。そして、レイヤーパレットに戻って一番下の「日の丸の国旗」みたいなマークを押すと、この画像にレイヤーが適用される。

マスクは、レイヤーと並んでフォトショップのもっとも重要な概念の一つだが、ここでは説明しきれない。考えるより感じてほしい。

白い部分に効果がかかり(例えば透過)、黒い部分は無視される。

今回は、暗い場所ほど透過したいので、マスクを反転し、マスクにトーンカーブをかけて諧調を飛ばした。なお、マスクを画像として処理するには、Altを押しながらマスクを左クリックする。

20130215zoujoji4

ちなみに、私はマスクにはどんな加工をしてもいいと思っている。好きに塗ったり消したりするのも厭わない。だって、白黒のプリントをするとき、いろんな形のマスクを作ったでしょ。もしくは手で一部だけ覆って揺らしたり。アンセル・アダムスのゾーンシステムは古典中の古典だけど、勉強になります。

で、先ほどの明るめの画像に、上のマスクを適用して元画像に重ねる(「通常」合成)と、下のようになる。

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空と、仏閣部分はいい感じになった。

次は東京タワー。

20130215zoujoji6_2

短い露出時間の画像を用意し、同じようにマスクを作る。さきほどの画像に重ねると、タワーの白飛びが緩和される。

でも、この画像でもまだタワーの中心部は飛んでいるので、もっと露出時間の短いRAWデータからさらにタワーの内側を重ねた。

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ところが、これらをすべて適用すると、タワーの諧調が豊かになりすぎてしまった。

20130215zoujoji9

こういう油絵チックな作風も見ることは見るが、今回の場合は過ぎたるは及ばざるがごとしであろう。

なので、今回は0.4秒露出のレイヤーの「不透明度」と「塗り」をいずれも80%、0.2秒露出は65%として効果を減らし、白飛び気味にした。

そして、最後に全体のカラーバランスを整えた。この写真は東京タワーの強い光によって全体的に赤に転んでいる。シャドウと中間調の青みをほんのり出すだけで、写真の透明度が一気に増す。「空気感」とはカラーバランスのことだと思う。

20130215zoujoji_2

これで完成とした。

まぁ、我流なのでもっといいやり方があるとは思いますが、考え方がわかっていただければ。こういう処理に抵抗感がある人もいらっしゃると思いますが、むしろ、酢酸にまみれて白黒プリントに明け暮れた経験がある人はすんなり入れると思います。

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コメント

ありがとうございます。とても参考になります。できるか分かりませんが、今度じっくり試してみます。

投稿: mossch | 2013/03/07 01:38

連投すみません。質問があります。
色の濃さは、ニコンで言うとピクチャーコントロールの色の濃さ(彩度)のことでしょうか?
もう一つ、色温度は3400Kとありますが、あくまで目安で、その場所のライトに合わせるという理解で良いでしょうか?

よろしくお願いします。

投稿: mossch | 2013/03/07 01:44

  mosschさま

そうです。ニコンだとピクチャーコントロールの色の濃さ(彩度)です。

色温度もおっしゃる通りで、厳密には現地で決めて下さい。3000~4000Kの間のどこかでしょう。
ただまぁカメラと好みで決めてしまえば、あとはほとんどいじらなくていいと思います。

私は、5Dや6Dなら3400Kあたりです。

投稿: 東山正宜 | 2013/03/07 11:46

はじめまして。
最近、比較明で都会の星を撮り始めたものです。いろいろ参考になります。
比較明の撮影・処理法は、そもそも合成が前提ですし、都会では明るさが違いすぎるので、完成度を高めるためにはレタッチもありだと思います。

投稿: yoshida | 2013/03/08 12:36

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