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2008/08/12

北島2連覇

北京五輪の競泳100m平泳ぎで、北島選手が2連覇を達成した。彼の泳ぎもすごかったけど、この日の夕刊1面に掲載された写真が秀逸だった。

Kitajima1_2

これは朝日新聞の夕刊1面にどかーんと掲載された写真( asahi.com より)。水しぶきがびしっと止まっていて、連覇と世界新を樹立した瞬間の躍動感がすばらしい。

聞くところによると、これほどの速いシャッターを、水泳のような室内競技で、つまり暗い場所で切れるようになったのは、今回の北京五輪が初めてなのだそうだ。それはまさに、デジカメの高感度化の恩恵であり、これまで見られなかった写真が技術の進歩によって見られるようになったということでもある。

ここで注目すべきなのは、このカメラマンが、たまたまニコンD3のようなカメラを持っていて、たまたまこうした写真が撮れたというのではなく、恐らく、北島選手が世界新を出したら派手なパフォーマンスをするであろうことを予想していて、わざわざ感度を高く設定し、水玉が印象的に写るように絞りをあけ、シャッター速度を速く設定して、この場所から「狙っていた」ということである。

それが偶然でないことは、下の写真を見れば一目瞭然だ。

Kitajima2

これは、同じ日の読売新聞夕刊1面に掲載された写真( yomiuri.online より )。つまり、少なくとも2人のカメラマンが、同じ意図で、ほぼ同じ場所から撮影していたのである。

おそらくこの2人は、新しいデバイスの能力を知り、それによってどんな映像が得られるかを考え、そしてそれが最も効果的に表現できる被写体を選び、つまり新聞の1面でどでかく扱える対象の時を狙って、まんまと傑作をものにしたということだ。

 

これは逆に言うと、新たなツールが手に入ったなら、ただそれを漫然と使っているだけでは(つまり「高感度のノイズが減って楽になったなぁ~」などと考えているだけでは)お話にならなくて、そのデバイスの能力をフルに引き出す「これまで誰もやらなかったような新たな撮影手法」を考え、さらに、最も重要なシーンで撮りきれるように周到な準備をして、実践しなければ、ほかの誰かがそれをやってしまうということである。

これはある意味、とても恐ろしいことだ。

コンピューターやデジタルデバイス、ネットの急激な進化は、それを能動的に使いこなそうとする人間と、そうでない人間の差を如実にしてしまうという現実が、まざまざと目の前に現れた、と、今日の夕刊2紙と他紙を見比べて思った。

自分がやらなければ、ほかの誰かがすぐにそれをやる。そういう時代なのだ。

ここで言いたいのは、新たなブレークスルーを成し遂げられるのは、それを「使いこなせる」人間ではなくて、「使いこなそうとする」人間だということである。

 

以前、今の小学生は、産まれた瞬間からネットやパソコン、デジカメが身の回りに普通にあって、彼らが10年後に撮る写真は、現在のわれわれが想像もできないような作品なのではないか、と書いた。その時の懸念を、今一度思う。われわれは10年後、彼らのさらに先を進めているだろうか。

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コメント

いろいろ考えさせられます。
新しいツールで何がしたいの?が重要だと思う。

ただ,産まれた瞬間から新しいツール:ネットやパソコン、デジカメが身の回りに普通にあってても
「使いこなそう」ができる人間になるかどうかは結局はその人次第か?とも思う。

パソコンもデジカメも無い時代に生まれた小柴さんが「ニュートリノを観測したい」→「巨大な純水タンクつくろう」「光電子増倍管を一杯張り巡らそう」→「神岡鉱山の跡を使っちゃおう」「浜フォトに作ってもらおう」と研究をやり遂げた人間の凄さをみるとね。そう思うんですよ。

管理人も今までさんざんフィルム使ってきたからデジタルのありがたみが分かって「使いこなそう」ができるんだと思う。
古いツールは今でも教育的意義があると思っていて,それは絞り・ピント・シャッタースピードなどなど,カメラって何?が分かるところ。

話がそれるが,小学生にちょっとした工作を教える機会があるんです。
で。もう目を覆いたくなる不器用さ という子供も少なくないんだよ。
直線が引いてある紙をはさみでまっすぐ切り取る作業もままならない。
これじゃあ,彼らに新しいツールを与えたって何ができるの?という感じがするんです。


それでも突然変異的に,新しいツールで「使いこなそう」ができる人間は少数ながら出てくるでしょう。
恐ろしくもあり楽しみでもあるね。

フィルムに限れば,とんでもなくラチチュードの広いネガが出てくると・・・究極の「写ルンです」が生まれそうだね。
デジタル一眼の対極かな。電池無しで固定スピードのシャッターが確実に切れて必ずそれなりの映像が写ると(^^)/

投稿: naka | 2008/08/14 08:23

nakaさん、こんにちは

おっしゃる通りです。もちろん、誰もができるわけではないし、やろうとする人は少ないでしょう。でも、壁を突破する人間は確実に現れると思うんですよね。


たとえば、惑星を撮影するときにビデオカメラを使って(今だとUSBカメラ)大量に画像を撮影し、後からよく写ってるコマだけを取り出してコンポジットする手法は今では当たり前ですが、当時はビデオカメラを星の撮影に使うなんて想定外だったと思うのです。

また、日食のコロナのような輝度差が激しい対象を撮影する場合、反転させたコピーフィルムをつかって白飛びした部分を差し引き、中間調の部分だけ抽出する手法は今でいう「マスク処理」ですが、これも当時はブレークスルーだったと思います。

これらは、いずれも沼澤茂美さんが始めた手法です。彼の300mmF1.5ライトシュミットによるDEEP SKYの写真もすごかったけど、本当のすごみはこういうところにあると思う。

まだまだあると思いますよ。想像もつかないような新しい手法が。別に最新鋭のデバイスを使わなくてもごろごろ転がってると思います。私ももう2、3回、新しいことやってみせまっせ。

投稿: 東山まさのぶ | 2008/08/15 16:21

東山さん
>新たなブレークスルーを成し遂げられるのは、それを「使いこなせる」人間ではなくて、「使いこなそうとする」人間だということである。
事あるごとに読み返し、軌道修正の指針としています。素晴らしい投稿本当にありがとうございます。

投稿: Miki | 2010/01/22 23:36

Mikiさま

いま読み返すと、大変大仰な発言をしております。お恥ずかしい限りです。私もかくありたいと考えてはいますが、実際はまったくそこまで至れていません。。。

投稿: 東山まさのぶ | 2010/01/23 02:25

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